『 神様の導き 』
初めての教室
初めての机
初めてのイス
何もかもが初めて体験が続いた日
お約束である委員会決めをしている中、早々に決まり、
時間を潰すのにノートに落書きし始めた。
何を描くなんて決めずに、シャーペンの動くままに進め
ノートを黒くしてゆく。
ぐるぐる丸を描いてみたり、
文字を何十回となぞって書いてみたり。
白かったページに黒が増えてゆく。
何も考えず、思いのままに筆を進めていく事に楽しさを感じ
小さく手を動かし描いていたのを
大きく動かし、落書きを増やしていく。
今度は何を描こう・・・
ふわふわと考え手を動かしていけば、
背中を突かれる感触に意識が戻り始めれば、
聞こえなかったクラスメートの声
そして
「」
自分を呼ぶ声に、驚き肩を揺らした。
だれ?
もしかして先生?
落書きしてるのを怒られるの?
「!」
強くなる呼び名に、心音を大きく恐る恐る顔を上げれば、
初めて見る顔が見え、首を傾げた。
ダレ?
合った視線を逸らさずにいれば、
「コレ、のだろ?」
視界に入れられたモノに目の前の人物から目を動かし眺めれば、
「あ!」
パステルカラーで描かれたウサギのカバーが付いている消しゴムに
声を上げれば、
「やっぱりな・・・」
溜息と共に出された言葉に
「ごめんなさい・・・」
思わず謝罪の言葉をこぼしてしまった。
初めて目を合わせ話をした人物に呆れられ、溜め息を付かれてしまい
申し訳なさと落ち込んでゆく気分に、
目の前に立っている人物の顔を見れなくなり、俯いていれば、
「別にこれぐらいで怒んねぇよ」
降ってくる言葉に顔を上げれば、
手の平に乗っている消しゴムを差し出され
「あ・・ありがとう」
親指と人差し指で挟む様に持ち上げ、消しゴムを筆箱にしい
ホッと安堵の息を吐き出した。
「じゃ」
短い挨拶の後、目の前から居なくなり自分の席に戻る背中を見つめ、
その日は終わった。
だけど・・・
「、宿題見せて」
イスに座る自分を見下ろす泉の言葉に驚きながらも、
慌て机の中から取り出し手渡した。
申し訳なさそうな表情なんてない、何気ない会話の中に自分の名前が違和感も無く
泉の声で呼ばれる。
「!」
廊下中響く程大きな声で呼ばれ、小走りに近寄り、
「さっきの礼な」
購買で売っているパックの牛乳を手渡された。
今まで名前で呼ばれる言葉どなかった。
ましてクラスの男子からだなんて・・・・
恥ずかしくて、火照った顔の熱が体中に広がり、
何故だか逃げたくなった。
でも、聞こえてくるチャイムに走りたい気持ちを小走りに変え教室に逃げ込んだ。
注目されてた・・・・はず
沢山人が居た中で、大きな声で名前を呼ばれた・・・
恥ずかしい・・・
両手で頬を覆い火照りを隠す。
でも、嬉しい。
嬉しくて、でも恥ずかしく
気持ちがグチャグチャになってそうすれば良いのか解らない。
どうして名前で呼んでくれるんだろう?
他の男子は苗字で呼ぶのに、どうして泉くんは名前で呼んでくれるの?
今日だけで片手で足らないぐらい名前を呼ばれ、
振り向き、返事をし、会話をした。
今も見下ろされながらも、
「はぁ?名前で呼ぶ理由?」
怪訝そうな表情と声に、少しだけ怖くなるも
「うん。なんでかなぁ・・・て、思って」
頷きを言葉を返せば、
「別にコレっう理由はないぜ」
困っているのか、右手で後頭部を掻きながらも
の真剣な表情に息を付き
「の苗字てさ、2人居るだろ?」
ゆっくりと告げられる言葉に、頷き返せば
「苗字で呼ぶと混乱するから、
どっちかを名前で呼べば良いて思ったんだよ」
ただ、最初に話しかけたのがだけだっただけ。
それだけなのだと言われた言葉に、
「確かにそうだよね」
納得をし、
「ありがとう」
微笑み礼を告げれば、
別に・・・
少し素っ気無い返事が返ってきた。
泉の言葉に後、少しだけ居心地が悪くなり違う話題を振る為
口を開きかえるが、泉を呼ぶ声に遮られ、言葉の代わりに手を振り見送った。
変哲も無い理由
当たり前の理由
でも、少しの優しい理由
再び火照った頬を泉から隠すため、雑誌で顔を隠し
早く次の休み時間になれと一心に願った。
そうしたら、また貴方の声で名前を呼んでくれるでしょ
2007
10 29